
今回は運動後の水分補給の論文をご紹介したいと思います。
運動後、筋肉トレーニング後の水分補給として、糖質やタンパク質も合わせてとることで、グリコーゲンの回復や筋合成の促進を促す、というデータもありますが、今回はまた違った視点からの論文です。
今回はこちらの論文を参考にしておりますので原文が読みたい方は参考になさって下さい(日本語です)。
では実際の研究をご紹介していきたいと思います。
もくじ
水分補給の前に運動時に起こる変化について
とある研究では、体温37℃前後の人が30分前後のジョギングをした場合、もし皮膚からの熱放散がなければ、体温は容易に40℃を超えるとされています。
実際には発汗や皮膚血管の拡張に伴い熱放散が促され、体温の上昇は38℃前後まで抑えられます。
もし発汗や皮膚血流量が増加し続けると、静脈還流量(心臓に返る血液量)が減少し脳血流が減少、失神を引き起こしてしまいます。
このバランスが乱れた時、つまり、体温も下げたいけど血圧も保ちたい、というバランスが崩れた時に熱中症が発生します。
水分補給 いかに体液量を増やすかに注目する
そこで今回の研究では「いかに体液量を増やすか」という点にポイントが置かれています。
体液量が増える、ということは熱放散と血圧維持に使える量が単純に増える、ということですので、熱中症予防やパフォーマンスの向上が期待できるのではないかと考えられています。
血液量に関係するものとして、今回の研究では、水分を留めておくタンパクであるアルブミン、また腎臓での水分の再吸収に関わるインスリンというホルモンがあり、その2つに注目されているので、その2点にポイントを絞ってみたいと思います。
水分補給 今回の実験デザイン
今回の研究は以下の通りとなっています。
- 20-24歳の若い男性被検者18人が研究対象
- 室温30℃の部屋で最大体力の70%の郷土で自転車運動を30分
- その直後10分以内に糖質70gとタンパク質20gを含むサプリを飲む
- サプリを飲む群とプラセボを飲む群とに分かれ、それを5日間続ける
その結果、体液量とアルブミン量がどのようになったのか、結果をみていきましょう。
体液量とアルブミンは増加したのか?
さっそく研究結果をまとめたいと思います。
ですので、特に暑い時期を含め、糖質とタンパク質を摂取しておくと、体液量、アルブミンの増加につながり、メリットを享受できる、という結果になったということになります。
ではさらに、糖質の摂取とも関連する、インスリンの役割について考えていきましょう。
糖質とインスリン 脱水に対する効果
続いては、インスリンの効果について検証していきましょう。
とある研究では、運動後に高糖質(ブドウ糖3.4g、果糖3.1g)飲料を摂取した後、105分後までインスリン濃度が高濃度で維持され、尿蓄積量の減少、ナトリウム吸収率の上昇を認めた、と報告されています。
これらの研究結果から、運動後の糖質、タンパク質摂取の重要性が分かったのですが、私としては以下の点が気になりましたので、考察とともに述べたいと思います。
●実験は5日間だったが、それ以上でも血漿量やアルブミンの増加は維持されるのか
→これに関しては運動後の摂取を続けることにより、ある程度の維持は可能ではないかと考えます。ただし、ある研究では運動後には肝合成能の低下が示されている研究もあるため、激しい練習が連日続いた場合には、消費量が合成量を上回り、アルブミンや体液量が減少する可能性も示唆されます。
●高齢の方にも有効な方法なのか
→この論文内でも高齢の方(平均年齢69歳)を対象とした研究、考察がされていますが、高血圧ぎみの方でも、特に血圧の問題なく、特に暑熱順化には有効であったと報告されています。ですので、高齢の方に対する水分補給の指導としても有効と考えられます。
今回の内容をまとめます。
今回は体液量、血漿アルブミンと、それに対する糖質、タンパク質摂取、またインスリンの関与に関して考察しました。
できるだけ体液量を維持することによって発汗量の増加、また体温を下げる効果が期待でき、さらに循環に対する作用も期待できます。
水分補給の理由付けの一助となれば幸いです。
今回は以上です。