「スポーツ内科外来」にてよくある質問3選!

 
Karasu
内科とスポーツの融合を目指す「NI×CE」のページです。 この記事を読んで頂いて誠にありがとうございます。

今回の記事では、私がスポーツ内科外来に勤務させて頂いてから、よく頂く質問と、その考察についてまとめさせて頂きます。

スポーツ内科では、受診して下さる方の多くは、陸上長距離や審美系競技など、ハードな運動量に加えて、体重コントロールが必要な競技の選手です。ですので、必然的に、同じような質問を頂くことも多くあります。

そこで今回は「特に多く頂く質問3選」を取り上げ、私なりの考えもご紹介させて頂きたいと思います。

質問① 食べているのに栄養や貧血の数値が改善しません

まず最初の質問は、本当に良くいただく質問についてです。

「食べているのに栄養や貧血の数値が改善しません。」

本題に入る前に少し解説させて頂きます。

スポーツ内科外来では
採血結果から、栄養の不足がないか、それに起因する貧血がないか、などを確認できることが最大のポイントです。前回の外来時に「数値が悪くて、栄養不足、さらに貧血もあるから改善するように頑張りましょう。」そういったお話をさせて頂いていても、次の外来時に改善していないことは良くあります。

そういった選手や、その保護者の方から、このご質問を頂くことが多くあります。

「食べているのに改善しない」から考えられることとは?

「食べているのに改善しない」

考えられる大まかなポイントとして、2つ考えられると思っており

①そもそも栄養量が足りていない
②栄養量は足りているが吸収が上手くできていない

ではないでしょうか。

①に関しては

「どうしても体重を増やしたくない」

という気持ちがそもそも根底にある選手も多く

せっかくスポーツ栄養士さんの指導を受けたにもかかわらず
再度外来に来られた際に、まったく摂取カロリーが増えていなかった

という選手も少なくありません。

こういった選手には、それぞれの選手の年代や競技種目、競技レベルに合わせて個別の対応が必要になると思っています。例えば中学生と大学生では「成長」について考慮する度合いが大きく異なりますし、また特に女性アスリートでは、女性特有の問題についてどこまで考慮するか、ということも、年代によって大きく異なります。

ただ、こういったことが起きてしまう背景として、私自身の説明不足もあるのかな、といつも思っています。

具体的には、そもそも数値が悪いことが、パフォーマンスに影響するだけでなく、ケガの罹患や回復、また身体以外にメンタルにも影響すること、将来的な骨への影響など、理解して頂きたいことがたくさんあります。

それをうまく理解してもらえるように説明できていないということも考えないといけない、ということです。

今後は、こういったことに関しても、スポーツ栄養士さんと協力しつつ、改善していきたいな、と考えています。

栄養がうまく吸収できていない可能性について

次に、栄養が上手く吸収できていない可能性について考察してみたいと思います。

これに関しては、非常に難しい問題なのですが、そもそもスポーツ選手は、交感神経過多になりやすく、栄養吸収に優位に働く副交感神経を活性化させるのが苦手な方が多い印象です。

それに加えて
運動中の腸管虚血や物理的刺激によって、胃腸はとても影響を受けやすく、さらに、1日の中で1番カロリーを摂取する選手が多いと思われる夕食前に、メインの練習が入ることが多いことからも、たとえカロリー計算していても、すべての栄養吸収が上手くできていない可能性も大いに考えられます。

そういった場合には、こまめな捕食や就寝前の補食(できれば血糖値が上がりにくいもので、できるだけ空腹時間を短くすることがbetterと思っています)、さらに入浴を活用するなど、個人の生活スタイルに合わせた提案をさせて頂く必要があります。

そのあたりの指導が、どの程度効果的なのかなど、今後外来で様々な選手とお会いさせて頂く中で、探っていきたいと考えています。

ちなみにこちらの記事が、腸のコンディショニングについてまとめたものになっておりますので、ぜひご一読ください。

スポーツと消化管コンディショニング【大腸編】

2020年6月13日

質問② 鉄剤を飲んでからどのくらいでパフォーマンスは上がりますか?

次の良くいただく質問に移りたいと思います。

「鉄剤を飲んでから、どのくらいでパフォーマンスはあがりますか?」

これは、血液検査で貧血を認め、治療を開始した選手から良くいただく質問です。

この質問に対して正確な答えはないのですが、以下のようにお答えすることが多いかと思っています。

貧血は、栄養と運動のバランスが崩れた証拠であり、おそらくしばらく前から全力で練習できていなかったと思われる。鉄剤が治療ではなく、栄養と運動のバランスを見直すことが根本的な治療。まずはそこを見直して、体調を改善させ、その後で十分な練習が積めて、初めて結果に結びつく。どのくらいで栄養と運動のアンバランスが改善してくるか、個人や環境によって異なるので、正確に答えるのは難しいです。

根本的な貧血治療とは??

貧血の治療はあくまで鉄剤がメインではありません。

「鉄剤内服開始→貧血の治療になっている→パフォーマンスも上がるだろう」

こういった勘違いが起きないように、しっかりお話をさせて頂いています。

私が勤務させて頂いているクリニックでは、おおよそ2-3か月後に次回の外来に来ていただくことが多いです。

鉄剤内服だけではなく、根本的な貧血の治療である栄養状態の改善にも取り組んで頂いた場合、だいたい2-3か月後の外来時に、数値が改善している選手に関しては、何かしら改善の予兆が感じられていたり、中には自己ベストが出ていたりする選手もいらっしゃます。

しかし、数値が改善していない選手に関しては、やはりなかなか改善に結びついてないケースが多いです。

そういった意味で、鉄剤を開始するだけではなく、栄養改善にもきちんと取り組んで頂けるかどうか、それによってパフォーマンスが改善してくる期間に差があると思っています。

質問③ 治療中は練習量を減らした方がいいですか?

最後に、多く頂く質問の3つ目についてまとめさせて頂きます。

「パフォーマンスが落ちていて来院していただき、採血結果から栄養不足や貧血があることがわかった。どのくらいの期間、もしくは量、練習をセーブしたらいいですか。」

これに関しても、正確な答えはありません。また大会までの期間や併存しているケガなどがあれば、それによっても異なるため、お答えさせて頂く内容については様々です。

「練習量を減らす」というよりも考えて頂きたいこと

こういった質問を頂いた際に、私がお伝えしていることとしては、

①大切なのはバランス、運動量が減ったから食事も減らす、という選手もいる。
それではバランスの悪さは継続してしまう。

②時期的に可能であれば、次の外来まで少し練習量を落とし、改善しているかを確認する。

③時期的に大会前などであれば、練習量をそのままにして、食事を増やし様子をみる(次回の外来は少し早めに設定。)

だいたいこの辺りの提案をさせて頂くことが多いですが、もう少し数値や練習環境、学校の環境などを配慮して、細かくアドバイスをさせて頂くことが多いかと思います。

繰り返しになりますが、バランスが本当に大切です。パフォーマンス不良の根底には、栄養不足があることがほとんどなので、運動量に見合った栄養が確保できない場合には、練習量も合わせて減らすのがbetterであるかと思います。ただ、試合の状況や部内での選考など、どうしても日々の練習から遅れをとるわけにはいかない、という相談も多数ありますので、そういった時に内科医として可能な範囲でご助言させて頂ければと考えています。

なかなかご本人が思っている状況と、実際にお話しをお聞きしたり、具体的に数値化してみたりすると、ずれが生じている場合が多くあります。

私が働いている施設では、スポーツ栄養士さんが常駐しており、またinbodyの測定も常時行えます。

そういった意味ではある程度客観的にご自身の状態を把握して頂きやすいのではないかと思っています。

最後にまとめます。

今回は、スポーツ内科外来で良くいただく質問3選、という内容でまとめさせて頂きました。

必然的に、スポーツ内科外来では、栄養や運動量、さらに貧血に対する治療や対処法に関するものが多くなります。

これ以外にも良くいただく質問はまだまだありますので、今後も機会があればまとめてみたいと思っています。