「内臓疲労」について、スポーツ内科医の観点から考察してみました。

 
Karasu
内科とスポーツの融合を目指す「NI×CE」のページです。 この記事を読んで頂いて誠にありがとうございます。

この記事では、私自身もなかなか言語化できていない

(そもそも言語化が必要ないのかもれませんが)

「内臓疲労」について考えてみたいと思います。

スポーツ内科での勤務を開始して。。

現在「スポーツ内科クリニック」にも勤務させて頂いていますが

激しいトレーニングが原因と思われる症状を訴える方や、採血データからかなり強く追い込んだ、もしくは疲労が上手く抜けていないのでは、と推測される方などがいらっしゃって、かつ本当に多岐にわたる症状や訴えがあり、人それぞれまったく困っていることが異なります。

ちなみに内科的な疲労の指標にできる、採血データの見方に関しては、以前まとめた記事もありますので、もし宜しければ参考にしていただければと思います。

♯1、採血結果からわかること

2020年3月22日

♯2、採血結果からわかること【CK、LDHなど筋肉系編】

2020年3月28日

中には筋肉の損傷で上昇すると考えらえる、「CK」という値に関しては、2000近くまで上昇しているアスリートの方などもいらっしゃって、これも個人差ではありますが、疲労の管理がうまくいかないと、簡単に何らかの不調が起きてしまうのではと強く感じます。

今回は、疲労による症状について、私なりに考えらえることや悩みを共有させて頂くべく、この記事にまとめさせて頂きます。

「内臓疲労」の症状について

今回の「内臓疲労」に関してですが、ある程度データとしてお示しできるものをもとに、私なりの考察を加えてお示しさせて頂きます。

事実上、明確なエビデンスが示せない内容も含まれるかと思いますが、その点はご了承いただければと思います。

内臓疲労の症状として、肝臓に注目してみる。

内臓疲労でどの臓器が疲労をきたしやすいか、ということですが、人それぞれ、また、競技特性によって異なると私自身感じており、一概にまとめれませんが、まずは肝臓に注目してみます。

肝臓といれば、「合成能」「代謝能」、つまり、重要なタンパクを合成したり、老廃物を代謝したりする、きわめて重要な臓器です。

肝臓の数値が上昇するような疾患、例えば「急性肝炎」などで入院する患者さんのほとんどが、なんとなくだるい、といった症状を訴えることが多いことからも

 

肝臓へのダメージ≒タンパク合成能の低下、また老廃物の代謝能力の低下と、
なんとなくだるい、という症状は関連している

 

と考えてもよいのではないかと思います。

 

激しい運動後は、ASTという肝臓の数値が上昇している選手が多いことからも、「内臓疲労」の一要因として、肝臓へのダメージはある可能性が高い、と言ってもいいかと思います。

 

時々ですが「ASTの上昇は筋肉由来では??」というご質問を頂くことがあります。このご質問に関しては、以前にまとめさせて頂いていますので、もし宜しければ下記の記事を読んで頂ければと思うのですが、運動後のAST上昇時、肝臓の代謝能低下が実際に起こっていることが調べられている論文があります。もちろん筋肉由来のASTも当然ありますが、その際少なからず肝臓はダメージを受けていることも頭の片隅において頂ければと思います。

運動による肝臓へのダメージ【内臓疲労とも関係?AST、LDH上昇をどう考えるか?】

2020年6月4日

 

肝臓は生体内での役割が非常に多く、構造も複雑で、とても繊細です。

激しく追い込んだあと、間違いなくなんらかのダメージを負っていると思います。

 

内臓疲労の症状として、膵臓に注目してみる。

続いては、「膵臓」に注目してみたいと思います。

そもそも膵臓は、あまり注目度が低い臓器かもしれませんが、私たちが思っているよりも非常に重要な臓器になりますので、ぜひご一読ください。

内臓疲労「膵臓編」まずは膵臓の機能について

膵臓の有名な機能の1つとして

「インスリンを分泌して血糖値を下げる」というのは、ご存じの方も多いかと思います。

実はインスリン以外にも、膵臓はでんぷんを分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼを分泌しており、血糖値のコントロールだけではなく、「消化」という面で非常に重要な役割を担っています。

こういった観点から考えますと、「内臓疲労」という言葉のなかに「膵臓疲労」という言葉が当てはまるとすれば、アスリートにとって非常に重要な、栄養の消化不良が起こることになります。

膵臓の内臓疲労 消化酵素の分泌低下

まず最初にお詫びからになりますが、以前から内臓疲労に関する論文を探していたのですが、ヒトでの研究では、明確なものは見つけることができませんでした。

ですので、ここから先は私の考え、また実感ベースのお話になりますので、ご容赦ください。

とても古い論文もありましたが、動物実験を元にした論文をいくつか参考にさせて頂くと(引用の一部:Konturek. J Appl Physiol. 34:324-328, 1973)

適度な持久系運動は消化酵素の分泌を促進する方向に、過度な運動は、消化酵素の分泌を抑制する方向に働く

という内容が多いように感じました。

これを実際に選手からよく訴えのある症状と照らし合わせると

●試合後は便がゆるくなってしまう。
●体重を増やしたいけれど、なんだが下痢をしやすい。

といった症状とつながるのでは、と考えています。

実際に「消化不良≒下痢」ということを連想される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

こういった一連の症状を、「内臓疲労」、一歩踏み込んで、語弊があるかもしれませんが、「膵臓疲労」と呼んでもいいかもしれません。

このあと腸の疲労についても触れさせていただきますが、こういった不調は、腸の疲労と膵臓の疲労など、様々な問題が複合的に起きているような方も一定数いると思われ(むしろ複合的に起こることがほとんどかもしれませんが)、個人的には膵臓の疲労は消化酵素の分泌と密接に関係しており、栄養摂取の観点からは極めて重要と思います。

ですので、あまりに消化に影響していると判断できるような場合には、消化を助ける薬の処方についても検討してもよいのかな、と思っています(これについては保険診療内で処方できる消化酵素薬に対する論文などは見当たらなかったので、あくまで私の個人的見解の範疇ですので、様々ご意見あるかと思います)

海外トップアスリートも多数愛用!消化酵素でコンディションアップ「アーゼライト」

2020年11月8日

ちなみに、以前にこちらの記事で、消化酵素機能含有の製品について考察した記事がありますので、よろしければご覧いただければ幸いです。

膵臓は沈黙の臓器と言われることもありますが、体の一番奥深くにあり、そしてサイズも小さいことから、あまり目立たない存在です。

ただ、その役割は非常に大きく、とても重要な臓器になりますので、理解を深めて頂ければと思います。

腸の内臓疲労について考察します。

さて、肝臓と膵臓について触れさせて頂きましたが、とても長くなってしまったので、腸はなるべく簡単に疲労について書かせて頂こうと思います(本当は極めて大切だと思っていますが、私は消化器内科がベースでもあるので、長くなりそうなので控えめにさせて頂きます。)

腸に関してはいくつかデータがあり

①長距離を走ったランナーで、競技後便潜血検査が陽性になることが多い。
②強い負荷後に腸内細菌が作り出すLPSという物質が血中から検出される。(腸の細胞の結合が緩んで血液中に逃げてしまっているイメージ)
③そもそも負荷が強い時は腸の血流が50%減以下になっている。

といった、明らかに腸に負担がかかっているというデータが見られます。

激しい運動では、そもそも物理的な刺激もありますし、当然の結果かもしれません。

また
腸は第2の脳と言われるほど重要な臓器、体の中の7割の免疫系が集まっており、栄養や水分吸収の中心でもあります。そんな大切でありながら、上述の通り、とても傷つきやすい器官です。ただ、その重要度を考えれば、可能な限り大切にしておく方がいいかな、と思います。

とはいっても、どうしても負荷が強くなればなるほど血流は少なくなり、物理的刺激も相まって、どんどん疎かにされてしまうのが「腸」ですので

①食事のとり方を工夫する(運動後すぐに固形物を摂取しないなど)

②なるべく副交感神経を活性化できるようにしておく
(入浴など、入浴で腸の血流も増えるとされています。)

③グルタミンを摂取する(腸粘膜の再生を促します。)

といったような限られた方法しかないないかな、と感じています。

腸の症状は多岐に渡り、特に代表的なものとして、腹痛、下痢といった症状で悩む選手の相談も多いですので、膵臓の疲労と合わせ、そういった症状全般を「腸の疲労」といって良いかと思います。

ちなみに食事に関して、こういった本はおすすめですので、もし宜しければ参考にされてください。

内臓疲労 まとめます。

今回は、「内臓疲労」に関して、ある程度まとめれる範囲で考察してみましたが、いかがでしたでしょうか。

「練習量が増えると疲労するのは当たり前、ただ、強くなるために練習量を増やしたい」

そういった思いは、競技レベルによらず、多くの選手にはあるものだと思っています。

その疲労との兼ね合いや、疲労レベルを考慮しながら、可能な範囲で内科的な介入をさせて頂けるように、今後もいろいろな論文を読んだりして、さらに知識を付けていこうと思います。

「こういう対策が有効でした!」「こういう論文もあります!」

というご意見などございましたら、ぜひご教授頂けるとありがたいです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。