運動による肝臓へのダメージ【内臓疲労とも関係?AST、LDH上昇をどう考えるか?】

 

この記事を読んで頂いてありがとうございます。

 

今回の記事は「肝臓」に注目したいと思います。

 

私は、普段から消化器、肝胆膵内科として勤務しているため、とある疑問を抱きました。

運動した翌日に採血すると、肝臓の数値であるASTが上昇する。ただし、ASTは筋肉にも含まれていて、肝臓がダメージを受けているのではなく、筋肉のダメージで上昇しているのだろう。だけど、本当に肝臓は疲労したりして、機能は落ちていないのだろうか。。内臓疲労っていうくらいだし、肝臓も何らか障害を受けるのではないだろうか、と。
 

今回は、その疑問を解決すべく、「運動が及ぼす肝臓への影響」ということで話を進めさせて頂こうと思います。

 

肝臓の数値であるAST、飲酒やウイルス感染などが原因で上昇することもありますが、そういったことで、肝臓にダメージを負われて受診された患者様は、みなさん主に倦怠感などを訴えます。

運動後には
飲酒やウイルス感染ほどではないにしても、肝臓にも少なからずダメージが及び、アスリートの疲労感や倦怠感の原因の一部になっている。

それが、いわゆる「内臓疲労」とも言えるのではないのか、と考えました。

 

少し古い論文ですが、この論文を読んで、少なからず疑問が解決しましたので、その内容にまとめてみたいと思います。

気になる方は、日本語の論文ですので、参考にして頂けますと幸いです。

 

内臓疲労と関係する?肝臓機能の評価方法について

 

まず、運動後は筋肉の損傷などによって、CKという数値やAST、LDHといった項目が上昇することが知られています。

 

どの程度上昇し、どのくらいの期間で低下するのかなどに関しては別記事にまとめてありますので、もしご興味ある方はご覧いただけますと幸いと存じます。

♯2、採血結果からわかること【CK、LDHなど筋肉系編】

2020年3月28日

また、それ以外にも、採血は、栄養や免疫の指標となり、色々なことがわかります。そちらに関しても以前にまとめていますので、ご一読頂けますと幸いです。

♯1、採血結果からわかること

2020年3月22日
 

前置きが長くなりました。申し訳ありません。それでは本題に入らせて頂きます。

 

今回の論文の内容をざっくり紹介します

 

今回の調査の対象内容をまとめますと

・16歳から20歳の長距離選手

・3月の春休み(?)の7日間の合宿中に調査

・練習は1日3回、早朝練習、午前、午後(合宿3日目は完全休養日)

・消費カロリーは4000kcal、摂取は3900kcal程度

・測定項目は、体重、採血にてHb、TP、AST、ALT、ChoE、CKなど

となっています。

 

さらに、これらに加えて「ICG試験」というものが行われ、またAST、ALTといった数値とともに、コリンエステラーゼ(ChE)という値も同時に測定されており、今回の文献は肝機能に関して、より詳細に評価が行われています。

 

今回の内容をより深く理解していただくために、まず、ICG試験についてまとめます。

 

内臓疲労と関係する?肝機能の指標になるICG試験とは?

 

ICG試験に関しては、わかりやすくまとまったものがありましたので、以下の記事もご参照ください。

簡単にまとめますと、肝臓で代謝されるICGという物質を注射し、15分ほど置いて採血し、ICGが体内にどれくらい残っているかを調べる検査です。

ICGの残っている量が少ないほど、より肝臓がICGを分解できている証拠ですので、肝臓の機能が良い、ということになります。
 
https://medical-checkup.info/article/44020512.html
 

肝機能の指標になるコリンエステラーゼ(ChE)について少しだけ

 

AST、ALT、ICG試験に加えて、コリンエステラーゼも肝機能の指標になる数値であり、今回の文献の理解に役立つと思いますので、少しだけまとめさせてください。

 
https://www.kango-roo.com/learning/2718/
 

コリンエステラーゼも、蛋白合成能の指標となる数値ですので、栄養状態が悪いと低下します。また、肝臓がダメージを受けて、蛋白質を上手く作れない時も低下しますので、肝機能の指標にすることもあります。

 

少し長くなりましたが、肝機能の評価に関して理解いただけましたでしょうか。

 

AST、ALTに加えてICG試験、コリンエステラーゼについて理解いただけると、今回の文献が非常にわかりやすくなると思います。

 

では、ここからは今回の文献の結果についてまとめていきます。

とても興味深いですので、引き続き読んでいただけますと幸いです。

 

内臓疲労と関係する?運動負荷がかかった時の肝機能はどうなるのか?

 

今回の論文は、合宿中に取られたデータです。

その運動負荷は1日の消費カロリーが4000kcal!!

 

私からするとかなりの運動量ですが、「土日共に一日練習、特に日曜日は練習試合だった。」みたいな学生などは、そういったことがよくあるのではないでしょうか。

 

結果は以下の通りとなっていますのでご覧ください。

 

運動負荷による、採血データの変動

 

今回の文献で示されているデータを、まずはみて頂きたいと思います。

採血は1日目、4日目、7日目、そして合宿終了後2週間の4回取られています。

ちなみに、文献の記載では、「合宿後半は雨が多くやや負荷量は減少した」と記載されていました。

 

 

このデータをまとめてみますと

・AST、LDH、CKは上昇がみられ、体に強い負荷がかかったことがわかる。

・Hb、Hct、TP、ChEの低下もみられ、蛋白合成能の低下がみられるとともに、合宿後半にかけてコンディションが不良になった可能性も考えられる。

 

さらに、ICG試験の結果も合わせてご覧頂きたいと思います。

 

肝機能に関してこの結果をまとめると?AST、LDHの上昇をどう読むか?

 

ここまで今回の結果についてみて頂きましたが、今回の文献の考察についてまとめます。

●合宿4日目には、AST、LDH、CKの優位な上昇が見られ、練習の負荷による影響と考えられる。

●AST、LDHの上昇に関しては、ChEの低下やICG試験の結果も踏まえると、肝臓へに負荷がかかったことも示唆するものではないか。

●しかし、CKの上昇もみられており、ASTの上昇が直接的な肝機能の低下と結びつけることはできない。ただ、ICG試験からの判断では、今回の結果、肝機能は、急性肝炎の回復期、また慢性肝炎の非活動期、脂肪肝といった各種肝疾患と同レベルまで低下しており、真に器質的障害が発生しているかは断定できないが、運動負荷による肝機能低下が起きていると考えることができる。

●AST、LDHとICG試験の間には相関関係が認めたれた。

今回の研究結果からは、ASTの上昇が、直接的な肝機能障害を示すわけではなさそうですが、強い負荷により、少なからず肝臓がダメージを受けることが示されました。また、AST、LDHとICG試験の間に相関関係が認められたことから、ASTやLDHの値が高いほど、体と同じく肝臓もダメージを受けている可能性があると考えられます。

運動によって
急性肝炎の回復期、慢性肝炎の非活動期、脂肪肝の方と同程度まで肝機能が落ちる可能性があるということで、これは「内臓疲労」という言葉で表現できるのではないでしょうか。
 

本日のまとめ

 

今回は、運動負荷による肝機能への影響について考察しました。

 

なかなか普段採血をすることもないとは思いますが、みなさん、もしくは指導しているチームの選手の体の中では、同じことが起こっているかもしれません。

 

体の声にしっかり耳を傾け、また、ケアを怠らないようにしてください。

有効な疲労回復に関して、以前まとめたものがあります。

もしよろしければ参考にして頂きたいと思います。

♯5、最も疲労回復に効果的なのはマッサージ?アロマも効果的?

2020年4月15日

最後まで読んで頂きありがとうございました。