本日は、鉄剤注射の危険性、そして新薬が登場した事について書いてみます!
陸上競技、特にその中でも長距離界では
鉄剤投与がタイムをよくする
とのことで、切っても切れない関係と言えるのではないでしょうか。
しかし、鉄剤、特に注射製剤は
投与量が多いと
肝臓などにダメージを与えてしまう事もあり、副作用も無視できない
ことが知られています。
日本陸上連盟も
鉄剤注射についてはガイドラインを出していますので要チェックです!

さて、今までは
「フェジン」
という1本40mgの鉄分を含む注射製剤が
主に使われていましたが
「フェインジェクト」
という1本500mgの鉄分を含む注射薬が
登場しました!
実に10倍以上の含有量です。
今までは週に何回かもしくは連日投与する必要もありましたが
新薬は週1回の投与でいいようになり
今後、広まっていくのではないかと予想されます。
そこで
・「フェインジェクト」の特徴
・鉄剤はどのように悪影響を及ぼすか
について考えてみます。
鉄剤注射の新薬「フェインジェクト」

新しく発売された新薬「フェインジェクト」
最大の特徴としては
週1回の投与を2回か3回続ければ十分
ということでしょう。
下の表をみてください。

この表は適切な量を投与された方の
ヘモグロビンの上昇度
を表しています。
という事になりますね。
驚くべきはその効果の持続時間です。
表を見ると、12週目まで効果が持続しています。
という事になります。
今までの薬では
連日、もしくは数週間に渡って投与が必要
であったことを考えると
大変有用な薬かと考えています。
スポーツ界でも鉄剤注射が禁止されているわけではない
ので今後使われ始めるのでしょうか。
情報を集めたいと思います。
「鉄剤注射」 カラダへの影響
突然ですが「脂肪肝」みなさん聞いた事があるかと思います。
余計な脂肪が肝臓にくっついて悪さをする
とざっくり理解していただければと思います。
それが
「ヘモクロマトーシス」
という病気です。
脂肪肝とは違い、「ヘモクロマトーシス」では、全身に脂肪ではなく、鉄が沈着し悪さをします。
具体的には
・肝臓に鉄がひっついて悪さをする→肝障害
・膵臓に鉄がひっついて悪さをする→糖尿病
・下垂体(ホルモンを調整する臓器)に鉄がひっついて悪さをする→ホルモン分泌障害
などです。
特にスポーツ選手では
こういった事が原因で、引退に追い込まれてしまう可能性もある
と考えられますので、注意が必要です。
では、実際にどの程度投与すると発症する可能性があるのでしょうか。
先程紹介しました
「フェジン」という薬を販売している会社も
過量投与に対する注意換気を促しており
その中で以下のような症例が報告されています。
貧血の改善のため、2ヶ月間で合計2040mgの鉄剤注射を受けた
この症例では、鉄分2040mgの注射による投与で、黄疸、肝障害が出現し
「ヘモクロマトーシス」の前段階と診断されました。
先程ご紹介した通り
投与量の推奨量は、おおよそ1500mgとなっています。
2040mgと1500mgで差はおおよそ500mg
新薬1本には、鉄が500mg入っていますので
適切な量の投与でも
鉄を多く含む食品なども摂取している場合には
知らぬ間に過量になってしまう可能性があります!
こういった理由で
鉄剤注射の適正使用が大切であると考えられます。
もちろんこれはスポーツ選手の症例ではないですし
個人差があることですので
どのように鉄剤注射を使うのかは大変難しい問題です。
ですので、基本的に鉄剤の注射製剤はスポーツ選手への使用は、推奨されていません。
なかなか個人で対応するのは難しい場合が多いですので適切に検査、治療を受けたい方は、ぜひ、「スポーツ内科学会」を活用されてください。
まとめ
今回の内容は
・鉄剤注射の新薬が発売されたこと
・鉄の過量投与は体にダメージを与えること
についてでした。
今後、スポーツ選手に使われるのかわかりませんが、医療現場にとって大変有用な薬であると思いますので、適切に使用できるようにしていきたいと思います。