この記事を読んで頂いてありがとうございます。
これまでスポーツと消化管のコンディショニングについてまとめさせて頂いており、今回が最終章になります。
今回の「大腸編」以外にも「上部消化管編」「小腸編」と書かせて頂きました。
上部消化管編、小腸編をまだ読まれていない方はぜひ読んで頂けますと幸いです。
大腸に関しては最も便通と関わることから、腹痛などの症状に加えて、便秘や下痢といった症状で困っている選手も多く、パフォーマンスに直結する印象があります。
そちらに関しても過去記事でまとめていますので、是非参考にしていただければ幸いです。
それでは、スポーツと大腸の関係についてまとめていきたいと思います。
もくじ
大腸のコンディショニング 解剖から
まずは簡単に大腸の解剖からです。

ですので、なかなか原因を特定しずらくもありますが、有名な疾患について、ここからまとめていきたいと思います。
切っても切れない「消化管と虚血」との戦い
上部消化管編、小腸編でも、虚血によってコンディション不良を引き起こす、といった話をさせて頂きました。
大腸も例外ではなく虚血によってダメージを受けてしまいます。
血流は人間の体にとって酸素や栄養を運ぶ極めて重要なものですので、虚血によって体に悪影響が出てしまうのは当然のことかと思います。
負荷の強すぎる運動はやはりそれなりに体にダメージを与えてしまうので、どういったことが体の中で起きているのかを知ることは非常に重要です。
そこでまずは虚血による大腸のコンディション不良に注目します。
虚血が原因で起こる腸の炎症「虚血性大腸炎」
虚血性腸炎はその名の通り、虚血が原因で大腸に炎症が起こる病気です。
●下行結腸やS状結腸など、左側の腸に起こりやすい。
●普段から便秘の人に起こりやすい。
●症状としては血便が最も多く、腹痛はそこまで強くない。
といった特徴がありますが、本来は便秘気味な高齢者の方がよく発症される病気であり、若い方が発症されることは滅多にないと思います。
若い人が発症することが滅多にないのになぜ、この疾患を知っていただくことが重要なのか?
そう思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それにはきちんとした理由がありますので、この後解説させて頂きます。
実際に大腸の写真を見てみましょう。
それでは実際に写真を見てみましょう。これが実際の大腸の中です。

写真でお示ししたように虚血が原因で腸に炎症が起き、表面部分が赤く腫れてしまいます。
虚血性大腸炎の治療法はあるのか?
治療法に関しては、ほとんどの方が重症化することがない病気ですので、経過観察のみで改善します。
まれに重症化した場合には手術が必要になることもありますが、そういった方はあまりおられません。
若い方にも「虚血性大腸炎」を知っておいて頂きたい理由としては?
ここからは先ほど述べさせて頂きました通り、「若い方には少ないのに、なぜ知っておいて頂きたいか?」という理由についてお話しさせて頂きたいと思います。
【理由】実は強い負荷により微小な出血が起きている可能性がある?
その理由に関しては、フルマラソン後の研究を引用したいと思います。
これらから内科的に考察すると、慢性的にこういったことが続けば、貧血の原因となり、パフォーマンスに影響を及ぼすのではないかと考えられます。
もちろん普段から強い負荷をかけてトレーニングしている方々には一概に当てはまらないかもしれませんが、いずれにしても注意が必要であることは間違いないとは思います。
練習などで強い負荷をかけることが避けられない場面もスポーツ選手には多いかもしれませんが、こういったことが起きている可能性がある、ということを理解いただければ幸いです。
ストレスによる腸の不調「過敏性腸症候群」
続いてはストレスによる腸の不調「過敏性腸症候群」についてです。
ざっくりこの病気についてまとめますと「ストレスなどが原因で、腹痛や下痢、便秘など、様々なお腹の症状を引き起こす病気」と考えて頂けたらいいでしょうか。
以下のような症状を感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
●試合前に緊張でお腹が痛くなる。
●様々な理由でストレスを感じると下痢をしてしまう。
●よくお腹が痛くなるがトイレにいったら改善する。
このような症状は今回ご紹介する「過敏性腸症候群」の症状である可能性があります。
ここから、ストレスが主な原因と言われているこの病気について考察してみましょう。
それには「脳腸相関」という言葉が非常に重要です。
「脳腸相関」について学んでみましょう。

脳腸相関とはその名の通り「脳と腸が非常に密接に関わっている」ということになります。
それによりストレスや緊張によって腹痛や下痢、便秘など、様々なお腹の症状が生じます。
過敏性腸症候群の具体的な診断に関しては、以下を参照ください。

試合の日の朝や試合前、合宿中など、お腹の調子が悪いけどトイレに行ったら治る、という相談をいただくこともあります。
便の調子がちょこちょこ変わる、トイレに行ったら治る、キーワードですので、症状が強くて困っている方は、受診を検討しても良いかもしれません。
過敏性腸症候群 治療法はあるのか?
過敏性腸症候群の治療に関してはとても判断が難しいことが多いです。
さらに、過敏性腸症候群用の薬も販売されており、そういった薬を試してみるという方法もあります。
https://amn.astellas.jp/jp/di/list/ib/index_ib-25.html
またそういった治療で改善しないときは、個別にいろいろな治療を試す、といった方法を考えなくてはいけません。
どういった治療法を選択するかに関しては、その都度医師に相談していただければと思います。
過敏性腸症候群に関しては、過去の記事にもまとめがありますのでよろしければ参考にされて下さい。
最後にまとめ
今回は大腸のコンディショニング不良について、まとめさせて頂きました。
消化管全体に言えることですが、症状が人それぞれであったり、受診するまででもないのかな、と感じたり、様々な問題があるかと思います。
しかし、背景には改善可能な疾患が隠れている可能性もあり、迷った時には受診を躊躇わないで頂きたいと思います。
今回は以上になります。ありがとうございました。