今回は、「亜鉛」の重要性について考えます。
亜鉛とは、体内にわずかしか含まれないものですが、
人間の体の中で、亜鉛を必要とする酵素(タンパク質)は
300種類以上あるといわれています。
さらに
亜鉛が不足すると、たんぱく質やDNAの合成が上手く行えなくなり
成長障害(身長障害など)が起こると言われています。
鉄不足より頻度は少ないですが、スポーツ貧血の原因になる
とも言われており、非常に重要な金属です。
中学・高校の陸上選手の中で、男子10%、女子20%に亜鉛不足がある
との報告もあります。
それ以外にも
・食欲不振や免疫力低下
・皮膚炎や口内炎
・慢性下痢
など、さまざまな健康障害の原因となります。
今回は、その中でも
「亜鉛欠乏と身長の関係について」
書いていきたいと思います。
亜鉛欠乏 身長との関係は?
亜鉛は、先程も述べさせて頂きましたが
欠乏するとDNAの合成に支障がでますので
成長障害を引き起こします。
成長障害での中でも
「身長の伸びに影響を及ぼした」
というデータがありますので
実際のデータを見ていきましょう。
低身長児の約10%は亜鉛不足??
1989年に、ある研究者の方が
「低身長児の中に、亜鉛が欠乏している子供がいる」
ことを報告しており、それ以来低身長と亜鉛の関係について研究されています。
実際に、亜鉛不足の人が多いとされている
「静岡・埼玉・千葉」などと
亜鉛不足の人が比較的少ないとされている「大阪」のデータでは
牡蠣や牛肉といった亜鉛を多く含む食品の消費量に差がある
との結果もでています。
低身長児の血液中の亜鉛値の研究について
前置きが長くなりましたが、実際の研究についてです。
低身長児211人を集めて、この研究のデータは取られています。
その中で、低身長児のうち、亜鉛の値が低い児童が、約47%もいたことがわかりました。
さらに、特に値が低かった児童は約10%おり、亜鉛の値がやや低い〜正常である児童に比べて、明らかに身長が低いことが示されました。
その他の報告でも、亜鉛欠乏と低身長の関係についての研究は多く
これらのデータを踏まえて考えると
特に成長期の児童・生徒にとっては無視できないものと考えます。
亜鉛を補充したら、いい影響はあるのか
もちろん、いい効果はあります。
ある日本で行われた研究を参考にしますと
3ヶ月間の亜鉛の補充で
・身長増加率の改善
・血液中ALPの上昇(骨が成長すると高くなる数値です。)
・成長ホルモンの増加(亜鉛はタンパク質の合成にも関与します。成長ホルモンもタンパク質です。)
といった、素晴らしい効果が示されました。
その他にも
スポーツ選手の貧血や口内炎の改善、皮膚炎の改善など
亜鉛欠乏は様々な問題を引き起こすことがありますので
補充はそういった症状の改善にも役立ちます。
亜鉛欠乏 診断と治療について
亜鉛欠乏の診断に関してです。
診断は、血液検査をすることによって、血中亜鉛について知ることができます。
補充に関しては、亜鉛を含んだ薬もありますし
比較的新しい薬を使うこともできます。

ただし、亜鉛の過剰症も起こり得ますので
気になる方は必ず受診するようにしてください。
受診したいけど、どうしたらいいかわからない方へ
スポーツをされている方の受診に関しては
少し一般の受診とは、異なる場合があります。
できるだけスポーツ選手の診察に慣れたドクターの診察を受けたい
という方は
「日本スポーツ内科学会」
への問い合わせをオススメします。
問い合わせフォームから問い合わせをしていただけたら
適切なアドバイスをもらえます。

最後に
今回は「亜鉛」の重要性について考えました。
あまり目立たない存在ですが、実は重要な役割を担っています。
今回紹介した症状がある場合には
1度受診を考えてみてください。
スポーツのパフォーマンスや日常生活が
大きく変わるかもしれません。